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2015年6月6日(土)

今夏もツイッターの外場村カレンダー(@calendar_sotoba)さんがしきでワンドロ開催してくれるそうです!
作品が終了してる今でもこうやってファンが盛り上がれる機会を設けてくださる方がいらっしゃるのはとてもありがたいことですね…。
私は今年の開催までに去年分のお題をすべてクリアさせたいぞ。

「最近恵がそっけない」


「許しを受けたのはおれだった」


「尾崎の子」


「室井の子」


「ばかな男」




◆◆◆◆◆◆◆
仕舞うとき忘れそうなのでここに置いとく

しき
「理由を教えて」


「吸血鬼には狼男の下男がつきものでしょう?」


「視える」



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 『命 ゆめみし』
話し声がしている。その声の主は若い男のようだった。声は一つだ。男は部屋の中央にいた。置かれた椅子に腰がけている。
足許には簡素な燭台が見えた。火を灯すのはひとつの蝋燭だ。男の影をゆらゆらと薄灰色の壁に映す。おだやかな熱と明りが小さな部屋を満たしている。
ほかには誰もいない。話し声はずっと昔から続いている。


「ぼくはかつて沙子を救世主のように思っていました。ぼくの理念を叶えてくれる存在に見えた」

「時が経つにつれて気づくんですね、彼女はただの象徴でしかありえないと。実態は誰もが抱く幼い欲を孕ませた、寂しがりやの少女のほかないですから」


「ぼくが沙子の側にいた意義は彼女のゆめを叶えることです」
「人は死なないでいる限り自分という箱から逃れられないんでしょうね。望みを捨てきれず、桃源郷を求め続ける愚かな姿はきれいと思う」

「沙子はね、自分のゆめの果てが世界をこわすことだと知らないんです。ええ、知らないんですよ」
「知ってしまえば沙子は沙子でなくなってしまう。この世にいる意義を失ってしまう。沙子が何よりも恐れている死を受け入れるしかない」
「だから沙子のゆめは永遠にきれいで幸せなままなんです」

一息置いて苦笑をこぼす。
「なにも沙子の悲しむ姿を見たいわけじゃないですよ」
「ぼくの神様の、神話を完成させてやりたかった」

火は蝋を溶かす。受け皿の上に歪な形を生み出している。

「さあ灯りがあるうちにぼくは行きましょう」
「行きましょう」

部屋には静寂が鳴り響いた。それは無だった。


Wエース(クロバス)